女子刑務所では、職業訓練がプログラムとして組み込まれています。
しかし、実際にどのような訓練が行われているか知っている人は少ないです。
この記事では、女子刑務所での職業訓練の詳細を解説します。
女子刑務所の職業訓練とは?
女子刑務所の職業訓練は、受刑者が社会復帰する時のために、職業的なスキルを獲得できるプログラムです。
美容や介護など、様々な分野での職業訓練が提供されています。
女子刑務所の職業訓練に関わる法律
職業訓練の実施は、「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」で以下のように定められています。
受刑者に職業に関する免許若しくは資格を取得させ、又は職業に必要な知識及び技能を習得させる必要がある場合において、相当と認めるときは、これらを目的とする訓練を作業として実施する。
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律
細かい訓練の内容や職業訓練の用語については、法務省の「受刑者等の作業に関する訓令」に記載されています。
女子刑務所の職業訓練は何種類あるのか?
法務省によると、2020年度までには、合計53種類の職業訓練が実施されたと記載されています。
実施された職業訓練は以下のようなものが記載されています。
- 溶接
- フォークリフト運転
- 情報処理技術
- 介護
- 美容
など、多岐にわたっています。
特に女子刑務所で人気なのが、「美容」や「介護」です。
2020年の栃木刑務所では、介護、フォークリフト、美容、パソコンなど、多くの職業訓練が実施されています。
2008年には、民間のエステティシャンの資格を取得できる訓練も開始されています。
誰が職業訓練を指導するのか?
女子刑務所の職業訓練については、外部の講師による指導もあります。
栃木刑務所でのエステティシャンの講座でも美容師の講座でも、外部の講師から学びます。
美術の訓練の講座では、構図・色の配合・デッサンの仕方など学ぶことができます。
外部指導員はいつでも募集され、指導にあたりますが、刑務官の得意分野においては、刑務官が指導することもあります。
なぜ女子刑務所で職業訓練を行うのか?
女子刑務所での職業訓練は、以下の2つの目的のために実施されています。
- 再犯を減少させるため
- 受刑者の社会復帰を避けるため
それぞれ解説していきます。
再犯は無職がほとんど
再犯者は無職でああり、職の安定は再犯率に大きく影響していることを意味しています。
以下のグラフは、2022年度の犯罪白書のデータを一部引用したものです。
右のグラフが再犯者を表しており、再犯者の実に85.1%が無職であったことを意味しています。
左のグラフの初入者も80%近くの割合で無職であり、就労状況と犯罪が密接に関係していることを意味しています。
安定した職業を持つことは、再犯を防ぐ上で非常に重要な要素であると言えます。
職業訓練で社会復帰を目指す
職業訓練は受刑者が社会にスムーズに復帰するためのステップの1つとして非常に価値があります。
訓練を受けることで、受刑者は具体的なスキルや知識を身につけることができ、出所後の就職活動に役立てることができます。
最近では、孤独に負けて窃盗してしまうケースや、女子刑務所の方の人間関係を求めて、犯罪を犯してしまうケースが増えています。
安定した職業に就くことは、安定した人間関係を手にいれる機会でもあります。
職業訓練は、受刑者の社会復帰を実現する上での大きなサポートとなります。
女子刑務所の職業訓練の費用は?
女子刑務所の職業訓練の費用や就職状況について解説していきます。
職業訓練の費用は無料
女子刑務所の職業訓練の費用は基本的に無料です。
無償で、美容師やフォークリフトの訓練を受講することができます。
受刑者の社会復帰を支援する公的なプログラムとして設定されているので、税金等の公的資金から支出されています。
- 注意
- 多くの元受刑者が「無料だからといって、刑務所のくるのはおすすめしない」と語っています。
職業訓練後でも就職は難しい
職業訓練後でも就職は難しい状況にあります。
佐賀県の麓刑務所では、2022年に刑務中に仕事が決まった人は28人中3人であり、いかに就職が困難であるかを物語っています。
そのために、メイクアップ講座やハローワークなどとの接続を丁寧に行なっている女子刑務所は多いです。
しかし、家がなかったり、希望に添えなかったりと、就職状況はあまりよくありません。
やはり、職業訓練後であっても、公的なサービスと個人の努力は必要です。
どの女子刑務所でどの職業訓練を行えるのか?
すべての女子刑務所ですべての職業訓練をおこなるわけではありません。
刑務所ごとに設備が異なるために、提供できる職業訓練も異なってきます。
女子刑務所によって決まっている
女子刑務所ごとに受けられる職業訓練は決まっています。
例えば、栃木刑務所で始まったエステティシャンの職業訓練は、すべての女子刑務所で行われているわけではありません。
女子刑務所によって、
- 施設
- 設備
- 地域の特色
- 指導員の専門性
- 教材
などが異なります。
職業訓練の内容は刑務所ごとに異なるため、受刑者の希望の訓練を受けることは、簡単ではありません。
例えば、岐阜県の笠松刑務所では美容室やホテル清掃の職業訓練に力を入れています。
職業訓練では選べない
女子刑務所は、受けたい職業訓練のために、場所を選べるわけではありません。
女子刑務所は、罪の重さ、住所、健康状態、出身地などによって、選択されます。
自分が美容師の職業訓練を受けたいからといって、栃木刑務所や和歌山刑務所を選ぶことはできません。
職業訓練は、自分の好きなものを選べず、自身が収容されている場所の職業訓練の中から選ぶ必要があります。
注意
そもそも模範的な受刑者でなければ、職業訓練まで行かないという難しさもあります。
職業訓練の後の受刑者の反応は?
受刑者は職業訓練についてどのように思っているのでしょうか?
基本的に受刑者の反応は良いものが多いです。
元受刑者の中でも、「フォークリフトの職業訓練があるおかげで、就職活動に前向きになれた」、という人もいます。
「自分も美容師の職業訓練を受けたかった」などの特定の要望はあるものの、職業訓練自体に悪印象を持っている人はあまりいないようです。